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横浜美術館「モネ それからの100年」展と音声ガイドがとてもよかった話

先々週の金曜日、お盆週で仕事もヒマだったのでこれはチャンス!と思い、午後半休をとって行ってきました。

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モネは子供のころから特に好きで、近場で作品が見られる機会がある場合にはできるだけ足を運んでいます。

みなとみらいにはちょこちょこ行く機会があるのですが、横浜美術館を訪れたのは今回が初めてでした。ランドマークプラザのすぐそばにあったなんて知りませんでした!とても綺麗な場所。

 

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※左端の建物が横浜美術館

 

展覧会にはとても感動しました。

MONET'S LEGACYというタイトルがついているように、モネに影響を受けた世界各国、いろんな時代、いろんな形態の作家、作品がテーマごとに展示されているのがおもしろかったです。

油彩画だけでなく、写真や映像、版画まで。

ウォーホルやリキテンスタインをモネ展で見ることになるとは思ってませんでした。

そして、特に「睡蓮」は本当に多くの作家がオマージュとなる作品を寄せているんだということを初めて知りました。

(私の1番は「チャリング・クロス橋」でした。なんでかうるっとくるくらい感動してしまった。)

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絵は教科書や画集の写真で見るのと、前に立って生で見るのではまったく違うといつも感じますが、(写真で見る絵はなんというか死んでいるように見えます…。動物園と剥製の違いというか。)モネは特にそうです。

私にとってモネの絵は、その前に立つと何度見ても新鮮な感動があるのです。

あまりに繊細で柔らかい光の表現によるものなのか、何層にも塗り重ねられて盛り上がる油絵の具の筆致によるものなのか、なんでモネの絵を見るとしんみりと心を打たれて泣きたくなるのか、懐かしさを感じてどきどきするのか、霧の匂いや草原を照らす太陽の光や断崖に押し寄せる波の音を感じるのか、ずっと不思議でした。

 

この日も、不思議だ不思議だと思いながら展示室をまわっていました。

 

そうしたら、その最大のヒントがこの日受付で550円を払って借りた音声ガイドの中にあったのです。

 

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※上記のリンク先でサンプルまで聞けますが、音声は櫻井孝宏さんが担当されてます。クラシック音楽のBGMもいい感じ、そして解説ももちろんですが作家インタビューが本当におもしろくて、鑑賞の楽しさを何倍かにしてくれるのでオススメです!

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この中でも特に印象的だったのが、写真家の鈴木理策さんのインタビューです。

もうめちゃくちゃおもしろくて、どうにか覚えていたいので脳内にメモできるように10回くらい繰り返し聞きました。

詳しい内容はぜひ会場の音声ガイドでお聞きいただければと思うのですが、私が特に印象深かった部分を少しだけ書いておきます。

 

※以下はあくまで私の主観が混じった、私なりに受け取った内容であり、言葉の選び方や切り取り方はあくまでニュアンスとなります!実際のインタビューは言葉の一言一句の選び方を含め、本当に心に響くおもしろさなのでぜひ会場で聞いていただければと思います。


まずインタビュー前半で、鈴木さんはモネ展で見ることのできるご自身の作品「水鏡」についてお話されています。この作品もとても美しくておもしろいので、ぜひインタビューを聞きながら会場で見て頂きたい!

そしてインタビュー後半部分です。

 

・私は写真を「世界の"部分”を手に入れるための道具」だと思っている。

・ただそこにある世界を写し取ったとしても、写真を「見る」という行為には、その人の経験による効率化や意味づけがなされる。

・例えば赤ん坊が初めて鏡を見た時にどう感じるか。それを他者だと思っておびえて泣いたりすることもある、大人は経験により「見る」という行為の効率化を行うのでそうはならない。

・人がモネの作品を見るとき、視線は「水面に浮かぶ葉や花」「水面に映る空」「水底の風景」などの何層もの階層を行き来する。

・そのときそこには時間の経過、「絵を見るという行為」がある。

・「知覚」の問題として絵画を捉え表現した点がモネの芸術の偉大さだと思う。

 

もう、めちゃくちゃ最高。

これ、伝わります?伝わってます?!この最高さ!全然伝わってないですよね?

私の要約も下手だしこれだけじゃ全然…。ぜひインタビュー全文を聞いていただきたい。私はこの鈴木さんのインタビューを聞いて、なぜ自分がこんなにモネの絵に心を掴まれてその前から離れられなくなるのか、初めてその理由の一片がわかった気がしたのです。

 

「世界の部分を手に入れる」っていう言い回しにまず胸が打たれます。今このブログ上でだけこの言葉を読んでもピンとこないかもしれないけど、会場でモネやたくさんの作家たちの作品を散々見てきた後半にこのインタビューがあるんですよ。

どうにかして、何とかして、一瞬だけでも、「世界の部分だけでも手に入れたい」って強烈に願った人たちの命の跡みたいな世界を潜り抜けてきたタイミングなんです。

 

どうにかしてキャンバスの上に留めておけないかと願うほどに、

そう思わせるほどに、自然は、都市は、瞬間は、この世界は美しい。

 

「ただ目の前にある自然を写し取りたかった」というようなモネの言葉が展示室の壁に書かれているんですよ。

だけど、鈴木さんはその先に、さらに絵を見る人の「知覚」があるという。

絵の前に立ち、それを見るその瞬間の時間の経過、その知覚の部分にこそモネの芸術のすごさがあるっていうんですよ。モネの絵には何層もの時間が詰まっている。夕陽が草原を照らしているその一瞬だけじゃなくて、ロンドンが霧に包まれるその朝だけではなくて、もしかしたら1年前、2年前、10年前の時間もそこには閉じ込められているかもしれない。絵の前に立つ人の記憶の中の風景すら、「知覚」を通じてそこに現れていくんです。

いくつもの海、いくつもの春、いくつもの朝・・・・

 

モネが自分の視覚に焼き付いたものを何とかしてこのキャンバスの上に写しとろうと命を込めた結果、そこには「知覚」と「無意識の思索」が生まれて、心を旅するような時間の芸術になった。

 

私は、モネの絵を「視覚」だけで見ているわけではない、(むしろ完全にフラットに視覚だけで見ることは機械にはできても人間には難しい)平面のキャンバスの前に立って、複数の階層を行き来して、「知覚」で絵を見て、ひとつの体験をしていたんだなぁと思いました。

モネの作品は特にそういう性質のものなんだなぁということがわかって、よい展覧会でした。

あー!オランジュリー美術館で「睡蓮」を見てみたい!それより先に直島の地中美術館ですかね…。

 

※鈴木さんのインタビューはこちらもとてもおもしろかったです!

www.cinra.net

 

大満足で展示を見終えたあと、せめてもうちょっとだけでも教養があればさらに楽しめたかもしれないのに…という気持ちが高まっていき、ミュージアムショップでこちらの本を購入して帰宅しました(笑)これは買って正解でした!

 

イラストで読む 印象派の画家たち

杉全 美帆子 河出書房新社 2013-12-17
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これから行かれる方はぜひ音声ガイドを借りることを検討されてみてください!

 

 

この日はとても天気がよくて、みなとみらいが本当に美しかったです。

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