心がもっと叫ぶ方へ

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RADWIMPS『スパークル』の歌詞で一番好きなフレーズについて

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なんだか変なタイミングですが、地上波で新海誠監督の映画『君の名は。』が放送された2018年冬くらいに書きかけていたものが下書きに眠っていたので公開します。

映画自体は公開当時の2016年に映画館で2回ほど観て、考察・感想ブログを少し読んだりしたくらいで特別に作品の大ファンというわけではないけど、「体験するエンタメ」として一級品だなという感想を持っています。

(私はもう立派に年齢だけは大人だけど、もしこの作品を10代ど真ん中で見てたら、かなり影響を受けたのでは、という気もする。)

 

ただ今回は作品どうこうの話はメインではなく、作中で使われている楽曲、RADWIMPSスパークル』の歌詞の話。

私は作中でこの曲が一番好きです。

この曲が流れるシーンはまさに作品のクライマックスともいえる部分で、メロディーも綺麗だし感情を直撃してくるようなドラマチックさがあると思うのですが、実は今まで歌詞をあまり意識して聞いたことがなくて。

地上波放送をきっかけに曲を購入して聞いてみたら、歌詞がとてもいいな、と改めて思ったのでそのことを書きます。

暗喩に満ちた言葉の並べ方に解釈の幅があったり、夢の中で夢を見ているような、どこか不思議な世界観だったり。
だけど、きっと多くの人が胸の奥のどこかで知っている感情、どこかで体験したことのある記憶や見たことのある風景を呼び起こされるような、不思議な懐かしさがおもしろいと思います。

(ちなみに野田洋次郎さんやRADWIMPSについては全く詳しくないのでそういった点からの言及はできないです…)

 

 
ここから先はすべて私個人の解釈や感想です。
アーティストご本人様や映画の関係者様がどこかでまったく違う話をされている可能性もありますのでそこはご留意ください(笑)

曲の中で一番好きなフレーズについては、最後に書きますね。

※以下、部分的に引用している歌詞の出典はすべてRADWIMPSスパークル」となります。

 

まだこの世界は僕を飼い慣らしてたいみたいだ

望み通りいいだろう 美しくもがくよ 

僕を従わせ、縛り、飼い慣らそうとする「運命」みたいな何かにまだ今は従っている。
まだその「時」が来ていないから、望み通りその中で翻弄されてやってもいいと考えている僕。

互いの砂時計 眺めながらキスをしようよ

「さよなら」から一番 遠い 場所で待ち合わせしよう

「互いの砂時計」はお互いが持っている命の時計、流れていく命の時間のこと。
お互いの時間を「眺めながらキスをしよう」  、つまりこの命を一緒に生きていこうよ、ということだと思います。

「さよなら」から一番遠い場所は、もう「さよなら」をする必要のない場所、「さよなら」の概念から最も遠い場所、つまり、もう二度と別れる必要のない「死後の世界」(簡単に言ってしまえば天国的な)で待ち合わせしよう、ということかなと思います。

さよならという言葉に、カギカッコがついています。


お互いの命の時間を見つめながらともに生きよう、そのあとは二度と別れる必要のない場所で待ち合わせしよう、ずっと一緒にいようねってことかな。(ロマンチックです)

 

ついに時は来た 昨日までは序章の序章で

飛ばし読みでいいから ここからが僕だよ


ここ、すごく好きです。人生を物語というか一冊の本に例えている。
ついに訪れた「時」=「君と出会った」ですね。

君の名は。」という物語の「ボーイミーツガール」の部分だと思います。
昨日まで(君に出会うまで)の僕の物語は序章の序章で、まだちゃんと始まってもいなかった。
君と出会ったことで僕の本当の物語、本番が始まった。

君に出会うまでのことは飛ばし読みでもいい、ここからが本当の僕だよ、っていうことですね。

この部分が好きな理由は、この感覚を私もたしかに知っているな、と思うからです。

誰かと出会って、想いが繋がることで、昨日までの世界が一変してしまう感覚。

初めて自分以外の誰かを求めたとき、初めて自分以外の誰かと想いが通じたとき、親や家族ではない他者から、自分が求められているのだと初めて感じたとき。
自分という存在への圧倒的な肯定を手にしたのだと思えた瞬間に、世界が昨日までとはまったく違う色、まったく違う彩度と明度で見えたこと。

何もかもが決定的に変わってしまって、ごはんの味も鏡の中の自分の姿さえも昨日までと違って感じられること。

これまでとは全く違う、「生きている」ことへの実感。


16歳の頃の自分が胸によみがえって、懐かしさに苦しくなります。

それは恋愛かもしれないけど、必ずしも恋愛でなくてもいいのかもしれない。

そして「僕」は、自分の持てるものだけを抱えたまま、「君」のもとへダイブしていきます。

 

まどろみの中で 生温いコーラに

ここでないどこかを 夢見たよ

教室の窓の外に

電車に揺られ 運ばれる朝に 


ここもとても好きです…。
だって、この感覚がほんの少しもわからない方って、いますか?!!(いるかもしれないけど)
こんな退屈な毎日じゃなくて、冴えない風景じゃなくて、明日から何か今よりもっと素敵なことが、突然何もかもが塗り変わるような、何かキラキラしたすばらしい日々が始まればいいのに、って夢想したことのない10代なんていますか??!(泣)

まだ出会っていないなにか素敵なことがこの世にはあるはずだ、これから何か新しいことが始まるはずだ、という漠然とした気持ち。ここではないどこかへ行きたい気持ち。

そして「教室の窓」という単語は、これを歌詞に含めるだけでものすごい情報量を付加することのできる、記憶のスイッチを入れることのできるエモーショナルワードだと思っています。教室、制服、体育館、グラウンド…。

AKB48の「桜の花びらたち」とかHey!Say!BESTの「スクールデイズ」とかXX:meの「トリカゴ」とか…これらの曲では出だしや序盤に出てきます、「教室の窓」が!!) 

「生温いコーラ」も、とても多くのイメージを含んだワード。気の抜けたコーラ。

気だるさ、退屈さ、充実感がない、イケてない…。
何となく初夏~夏なのかな?みたいな季節感すら感じさせてくる…。

運命だとか 未来とかって 言葉がどれだけ手を

伸ばそうと届かない 場所で僕ら恋をする

時計の針も二人を 横目に見ながら進む

こんな世界を二人で 一生 いや、 何章でも

生き抜いていこう

ここは楽曲的にサビですが、歌詞のテーマとしてもまさにサビ。
「言葉」も「時間」も届かない場所で、それらの制約を受けない場所で恋をしよう、ということで、この辺りは時間や距離を飛び越えながら誰かのために自分のために運命を変えていく「君の名は。」のテーマそのものになっています。

一番大事な言葉である「君の名前」すらわからなくなってしまっても、二人はそれを越えてもう一度出会います。


しかも「一生」と「何章」を掛けていて、人生を物語、一冊の本に例えた1番の歌詞ともリンクしています。「何章でも」=「何生でも」=「前前前世から」ですね。

「はじめまして」なんてさ 遙か彼方へと追いやって
1000年周期を 1日で息しよう

2つ目のカギカッコ。言葉も時間も僕らを縛ることなんてできない、僕らの恋の前で、そんなものにたいした意味はない。

「1000年周期」は平安時代、彼は誰時、かたわれどき、らへんを連想させる。

辞書にある言葉で 出来上がった世界を憎んだ

万華鏡の中で 8月のある朝

「言葉」の制約を受けることへの抵抗感がここにも出てきます。
「万華鏡」というイメージも閉塞感というか、閉じられた世界の中で美しく変化する、という意味ではAメロの飼い慣らされた世界で美しくもがく姿とリンクする印象です。

 

嘘みたいな日々を 規格外の意味を

悲劇だっていいから望んだよ

そしたらドアの外に

君が全部抱えて立っていたよ

はい。
ここです。

そうです…

ここが私が一番好きなフレーズです。


前半2行の意味合いは1番の「♪まどろみの中で生温いコーラに~」と近いと思います。

少し違う角度から同じ話をしています。

もしも明日隕石が地球に降ってきて、世界が終わりを迎えるとしたら…。

教室の窓から、電車の中から、変わり映えのしない街を眺めつつ、ぼんやりとそんな妄想をしたことのある人ともきっと多いと思います。

 

1番と違うのは、その部分へのアンサーが後半2行にあるところ。

嘘みたいな日々も、規格外の意味も、ここではないどこかも、僕の序章を終わらせるきっかけも、

その「全部」を君が抱えて立っている。


そして「君」はドアの「外」に立っています。
君が立っているのははドアの前ではダメで、ドアよりもこちら側ではダメで、絶対にドアの「外」、扉を開いたその先である必要があると思います。


他者は自分の心、自分の世界の「外」側にいるからです。

人が人と出会うことが、どれだけの天変地異よりも大きく人生を変えてしまう可能性があること、体中の細胞をまるで生まれ変わらせてしまうようなパワーすらあるということを、こんな言い方で表現できるんだな…っていうのが、私がこの曲の歌詞の中で、一番感動した部分でした。

 

まるで異なる宇宙と宇宙が衝突するみたいな現象。

 

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高校生前後くらいの年齢のほんの一瞬のあいだ、「この世界のすべてなにもかもと天秤にかけても私にとってはこの恋が重い」、みたいな瞬間がある気がするんだけど、そのことを強烈に思い出しました。


この恋が壊れてしまうなら、それは世界が壊れてしまうことと同じだ、って本気で思っていた時があったこと。「君の名は。」ってそういう物語だなぁと思います。

それを心から確信していられる少女の時代、少年の時代にだけ持つことのできるエネルギーが、たぶんこの世界にはある。


今はもう、例え一生に一度の大恋愛だと信じたほどの恋が壊れてしまっても、世界は別に壊れず続いていくことを知ってしまっている大人だからこそ、よけいに眩しくて苦しくてせつない気持ちになります。
 

 

夏に聞くとまたなんかいいんですよね。

 


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